鰍沢って
昨日「鰍沢」を初めてお客さんの前でやりました。
季節はもう春ですが…
「鰍沢」は雪が降る山奥での噺。
イメージに近い着物をまとい、帯を締めて、気合を入れました。
話は遡りますが、前回の記事で「笑うところはほぼ一ヶ所もない噺」と書きましたが、
その後、稽古を続けるうちに、
(あれ…?これって、見方を変えると相当滑稽では…?)と思うことが多くなり、それが段々確信になってきました。
いままで、他の噺でも、こちらは相当真剣に演っているシーンでも、
その場面の中にある可笑しみをお客さんが掬い取ってくれて、笑ってくれる、ということがありました。
はたして…
やっぱりそうでした。
お客さんは今回も、そういう一瞬をしっかり捉えて笑っていました。
こちらも予想していたので(待ってました)的で、
なんだか、お客さんが共犯者であるような喜びを一瞬味わいました。
さて、その話とは別に、
今回の高座に臨むにあたり、
まず課題としたのは、フォームでした。
…なんて言うとスポーツみたいですが、
歌も落語も、私にとってはフォーム(姿勢)が重要です。
私は、気持ちがお客さんへ向かうと、首も向かってしまいます。笑
斜め前から撮った写真を頂くと、いやおうなしに目につきますので、
気にしています。
そういう設定で演じているわけでもないのに、姿勢に癖が出るのは困りものです。
きっと声の響きにも影響があると思います。
落語の場合は、演じている人物とその動作によって微妙に姿勢が変わるのはむしろ自然だと思いますが、
地語りの時は、癖が出ないほうがいいと思っています。
今回、仲間が撮ってくれた斜め前からの写真。
枕での一枚と思われますが、首が自然で、心から嬉しい。笑
首だけでなく、姿勢に関しては私は課題満載ですが、
癖だけに、直すのは簡単ではありません。
でもあきらめずに、楽しみながら、フォームを作っていきたいと思います。
落語も、30分語り終わった時の身体の熱さや、ぼぉっとした感じは、まさにスポーツです。
今回、全体的にどうだったかは、お客さんの感想にお任せいたしますが、
会の最後に圓窓師匠が高座で話してくださった総評の一部を書き起こしてみました。
“…で、早千さんが「鰍沢」。これは私の師匠の圓生が十八番のようにしてやっていた噺ですが、
滑稽落語と違って、笑わせようとする流れ、場面がひとつもない落語なんです。
ということは、下手にやると損するんです、ええ。
やって損する人たちのほうが多いです。プロの中でもね。
だからこの噺をちゃんとやれるというのは大したものだと常々思ってましたが、
早千さんが見事にやってくれました。
多分、うちの師匠があの世で聞いていればね、
「なかなかやるねぇ…へへへぇ」なんて、嬉しくなって笑ってくれると思います”
このコメント、みなさんには話半分として読んで頂きたいのですが、
私にとっては宝です。
また頑張れそうです。